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十七歳の夏

 十七歳の夏休み、友達のまゆみちゃんとプールに行った。少し遠くの、大きなレジャー型のプールに、電車を乗り継いで出かけた。真っ白な地に、虹色のラインがクロスに入ったデザインの水着をおそろいで着て、二人ともピンクのビーチサンダルを履いて、気に入りの麦藁帽子をかぶっていった。
 少し曇っていたけど、泳ぐにはじゅうぶんな日差しがあって、でもなぜかあまり混んでいなくて、とても気分がよかった。ひとしきり遊んで、笑って、お昼にホットドッグを食べて、プールサイドで脚を投げ出してひと休みしていると、まゆみちゃんが言った。
「十七の夏がいちばんいいよ」
 ふうん、どうして? わたしが聞くと、まゆみちゃんは、わたしが飲めないコカ・コーラをごくごくと飲み干してから言った。
「だって、十六は子供で、十八はオバンでしょ。やっぱり、十七の夏がいちばんいい」
 きっぱりと言い切るまゆみちゃんの、ちょっと大人っぽい横顔を見つめながら、わたしは、ふうん、そうなんだ、十七の夏ってそんなにいいんだ。とくべつな夏なんだ。頬に水しぶきを感じながら、ぼんやりとそう思った。
 わたしの十七歳の夏が、とくべつな夏だったのか、そうではなかったのか、今ではあまり思い出せない。ただ、あの日の午後の白っぽい風景だけは、たしかにとくべつな夏の記憶としてくっきりと残っている。

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